室戸桜と太平洋を一望する爽快ハイキング

  • 四十寺山ハイキング
室戸岬のオーシャンビューを堪能できる、室戸市室津にある四十寺山には、地域住民が愛情込めて整備したハイキングロードがあります。道中には植樹した室戸桜やオンツツジ、天然の山野草のほか歩きやすいハイキングルート、絶景のオーシャンビューを眺める展望台も人気を集めています。


3月下旬に見頃を迎える室戸桜。

標高313メートルの四十寺山は、古くから弘法大師ゆかりの行場として知られています。市史などによると、かつてこの山に四国霊場24番札所・最御崎寺があり、最御崎寺が現在の室戸岬に移った後は奥の院になったとも伝承されています。現在も山頂に残る寺堂には、十一面観世音菩薩、地蔵菩薩、薬師如来の三体の石仏があります。
古くは地元の子どもたちの遊び場であり、桜の名所として愛される憩いの場でしたが、次第に雑草や雑木や草木が生い茂り、地元民の足が遠のいていたそうです。
そんな状況を打開し、かつての里山の賑わいを復活させようと、2012年に住民有志で「四十寺山・桜美人の会」を結成しました。同会ではハイキングルートの再整備のほか、室戸桜100本やオンツツジ200本の植樹、室戸岬や市街地を一望できる展望台2基の整備を進めてきました。

現在は、農業や漁業関係を含む30代〜80代のメンバー20人が、年数回の草刈りのほか、四十寺山の植生などをガイドツアーで紹介しています。
「小さい頃はからこの山で遊び育ちました」と話す久保壯一会長は「桜の名所であることや、空海ゆかりの自然豊かな山であることを、ツアーを通じてたくさんの人に紹介したいです」と意気込みを語ります。


植物ガイドツアーの様子。


春に咲き誇る鮮やかなオンツツジ。

取材に伺った日は、久保会長と若手メンバーの武井さんにご案内いただきました。
「四十寺山は登りやすい山で、いろんな“自然の顔”を楽しむことができるんですよ」と久保さん。緩やかなハイキングコースは滑りにくい靴であれば、軽装で楽しむことができます。虫対策のために長袖長ズボン、帽子の着用がオススメで、山頂まではゆっくり歩いて1時間から1時間半ほどです。
市街地からほど近い山ですが、数十分歩くと人里離れた静かな木立が広がり、ゆったりと森林浴を楽しむことができます。ウバメガシや様々な落葉樹、そしてシダ植物が彩りを添えています。


落葉樹やシダで囲われた森は、ゆったり歩きやすい平坦なルートです。

道中には、かつて城や居宅に使われていたという石を切り出す石切場のほか、戦時中に用いた砲台跡もあります。「植物に加えて見どころがたくさんあります。座り心地のいい岩がゴロゴロしているので、休みもってハイキングをしてほしい」と久保会長。
また、空海が魔物を閉じ込めたという「にしり岩」もあります。巨岩の上には空海の足跡と言い伝えられる窪みがあり、メンバーの武井さんは「魔物を押さえ込んでいる空海の呪法の力です。ここに来ると不思議と元気が出る」と笑顔で話してくれました。もともと一つの巨岩だったものが真っ二つに割れ、“ズレた”(地元の方言で「にしる」)ことが名前の由来だそうです。


石切場でほっと一休み、自然の恵に思わず笑みが溢れます。


空海の伝説が残るにしり岩、上部に空海の足跡とされる窪みがあります。

ほどなく進むと視界が開け、山頂への展望ルートへ。道中には植樹した室戸桜やオンツツジが立ち並びます。そのほか、松やユズリハ、センブリやスミレなど多様な植物がお目見えします。
山頂付近にある2基の展望台で眺めるオーシャンビューはなんとも絶景!高知市から徳島側まで広く見渡せて、久保会長は「ここに来ると、丸みを帯びた地平線や草花や自然の雄大さが堪能できるんです」と、その爽快感を語ってくれました。


同会メンバーと市で協力して作り上げた展望台から絶景が楽しめます。

また、山頂近くには、かつて空海が修行した由緒ある寺堂があり、奥ゆかしい雰囲気や神妙な空気が流れていました。現在でも、同会や住民が年に数回草刈りや清掃に汗を流しています。その際には、絶景の展望台でおきゃく(宴会)をすることもあるそうです。


山頂部近の寺堂では、今も住民が想いを込めて管理しています。

四十寺山の西にある中山山には、室津城跡のほか、蓮やスイレン、大木のユーカリが見られるコースがあるほか、初夏には無数のホタルが集まり、音楽イベントも開かれています。
久保会長は「住民が一体になって、楽しくて笑いの絶えない地域にしていきたいね」と張り切っています。


初夏に賑わいを見せる蓮の花、周辺ではイベントも開かれています。

周辺には、四十寺山とは植生の異なる草花や地形を楽しむことのできる「室戸ジオパーク」、子どもたちに人気の「廃校水族館」や「室戸ドルフィンセンター」などの観光施設が充実しています。そのほか、室戸キンメ丼やお刺身をはじめとする新鮮な海の幸を堪能できる「キラメッセ室戸」をはじめとする飲食店も数多く、泊まりがけで楽しみたいところ。
心もお腹もいっぱいになる、極上の観光体験にぜひお出かけください。

●ガイドのシーズン
令和6年3月下旬~4月下旬の土日

■詳細はこちら
https://doppuri.kochi-tabi.jp/guide/guide_muroto.html

2024年3月現在の情報です。

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