あんぱん調査隊vol.7
80年の時を経て。「掩体」が私たちに伝えること

2025-06-20

★目次
1. 「掩体(えんたい)」とは?
2. 南国市の掩体ガイドに参加!
3. 掩体は戦争の悲惨さを今に伝える遺産
高知出身の漫画家・やなせたかしさんが主人公のモデルとなる連続テレビ小説「あんぱん」。今週の物語は第二次世界大戦の時代でした。「正義」とはなにか?登場人物たちの心情とともに、激動の時代が描かれていきます。
今回は第二次世界大戦中に建てられた「掩体」について学ぶために、南国市に向かいました!
1.「掩体(えんたい)」とは?
掩体とは、飛行機の格納庫のこと。
当時、高知県南国市には村を丸々ひとつ潰してつくられた海軍航空隊の基地があり、そこに掩体が建てられました。木製や土で造られたものは解体されてしまいましたが、コンクリート製の掩体7基は現存しており、見学することができます。
このような掩体は高知県のほかに、千葉県・大分県・北海道にも残されているそうです。
2.南国市の掩体ガイドに参加!
訪れたのは南国市の前浜(まえはま)というエリア。高知龍馬空港からほど近く、のどかな田園風景と住宅街が連なるエリアです。
そんな風景のなかに突如現れる、緑に覆われた半円型の大きな構造物。
水田の真ん中に建つその姿は、初めて見る人にはきっと不思議な光景として映ることでしょう。
今回は南国市のガイドの方に、前浜に残る掩体について詳しく教えていただきました。
ガイドをしてくださるのは、南国市観光案内人の会の森本さんです!
パンフレットを頂き、早速近くにある掩体へ歩いて向かいます。
5号掩体は公園として整備されており、間近で見ることができます。
掩体の建設に携わったのは中学生やその母親、高知刑務所の受刑者、朝鮮半島から強制的に連れてこられた人々。女性や子どもが中心になっているのは、多くの男性は出征していたためだそうです。
物資も人手も限られている中、短期間のうちに建てられました。
次に向かった4号掩体は残された掩体のなかでもひときわ大きく、航空機が2基同時に格納されていたそう。
これがほとんど手作業で建てられたとは…
近くに立つとその大きさに圧倒されます。
当時の掩体は外側が草木で覆われていて、敵機からわかりにくいようにカモフラージュされていたそうです。
1号掩体には、実際に銃撃を受けた弾痕が。
ガイドの森本さんによる、実際にその場で銃撃を目にした方々の土佐弁交じりの証言、そして写真や地図から、より生々しく当時の状況が思い起こされます。
最後に訪れたのは7号掩体。
この掩体は戦後、後部を打ち抜いて道と水路が通されました。
戦後の復興を支えた前浜の人々の暮らしとともに、掩体が残されてきたことがわかります。
実際に通り抜けてみると…
掩体の天井には、ドームを作るために敷き詰められたむしろやセメント袋の痕が。
当時の人々の手によってつくられていたことがありありと伝わります。
森本さんのガイドとともに、7基の掩体を巡り歩くこと1時間。
ただ見ているだけではわからなかった気づきがたくさんありました!
3. 掩体は戦争の悲惨さを今に伝える遺産
今回調査に訪れた前浜掩体群のある海軍航空基地は戦時中実際に銃撃を受け、掩体にその痕跡が残された数少ない場所です。
かつてはこの航空基地から戦地へと飛び立ち、帰ってくることのなかった特攻隊の戦機もありました。
「戦争についての情報を学習することも大事だけれど、まずは掩体を見て、感じてほしい」と森本さんは語ります。
戦後80年という時を経て戦争を経験した人たちが少なくなっていくいま、地域の人々の暮らしとともに静かに建つ掩体の姿。悲しみの歴史を繰り返さぬよう、無言のメッセージを送り続けているように感じました。
前浜掩体群の詳細とガイドについては南国市観光協会のHPからご覧いただけます!
https://www.nankoku-kankou.jp/life/dtl.php?hdnKey=50
今回のガイドは掩体を歩いて巡って1時間ほど。見るだけではわからない、掩体にまつわるエピソードをたくさん知ることができるので、ぜひガイドさんとともに巡ってみては!
次回の記事もお楽しみに。ほいたらね!