あんぱん調査隊vol.1
ヤムおんちゃんのあんぱん10銭は高い?

2025-05-02

★目次
1. あんぱん10銭は高い?
2. 鉄道運賃にも注目!
3. 御免与町と高知の位置は?
NHKの連続テレビ小説「あんぱん」が3月31日から放送されています。
「あんぱん」は高知がふるさとのやなせたかし・暢夫妻をモデルに描かれる物語で、今放送されているのは、昭和初期の高知が舞台です。
その中で、今回私たちは、番組タイトルでもあり、第1週から登場する「あんぱん」の値段、重要な場面で登場する駅に注目しました!
1. あんぱん10銭は高い?
ドラマで最初に「あんぱん」が登場したのは、ヤムおんちゃんが嵩を元気づけようと、「あんぱん」をふるまうシーン。その美味しそうな様子に、みんなが欲しがりますが、ヤムおんちゃんは、大人達には10銭を請求(昭和2年(1927年))。釜じいを始め、御免与町の人々が、その値段に驚くシーンが印象的でしたね。
その後、朝田パンが開店するときには3銭、のぶの師範学校入学前は4銭(昭和10年(1935年))という値段の設定でした。
当時の銀座木村屋総本店の「あんぱん」1個の値段※は、大正12年(1923年)には2.5銭、昭和13年(1938年)は5銭でしたので、朝田パンの値段は妥当ですが、ヤムおんちゃんの「あんぱん」は、木村屋の2倍~4倍という少しぼったくり気味の値段で、御免与町の人々の反応は納得できますね。※引用:森永卓郎 監修(2008).『物価の文化史事典』. 展望社
ちなみに、ドラマの値段を、消費者物価指数を基に換算すると、昭和2年の10銭は令和6年(2024年)の約171円(1円=100銭)。スーパー、コンビニで買える袋入りあんぱん(100~150円程度)よりは少し高めの価格設定と言ったところでしょうか。
現在の木村屋のあんぱんは220円程度ですし、1個1,000円を超える高級な「あんぱん」も販売されているので、現代では、ヤムおんちゃんのあんぱんは驚くほどの値段ではありません。嗜好品に対するお金の使い方が、当時と現在では変わっていることを感じますね。
1927年 (昭和2年) |
1935年 (昭和10年) |
1955年 (昭和30年) |
1975年 (昭和50年) |
1995年 (平成7年) |
2024年 (令和6年) |
|
消費者物価指数※ | 1 | 0.8 | 255 | 838 | 1514 | 1713 |
ヤムおんちゃん | 10銭 | ー | 26円 | 84円 | 151円 | 171円 |
朝田パン | 3銭 | 4銭 | 13円 | 42円 | 76円 | 86円 |
あんぱんの1955年以降の値段は、ドラマ(昭和10年)の設定値に、消費者物価指数をかけて試算
2. 鉄道運賃にも注目!
次に、ドラマにチラッと登場した鉄道運賃についてもご紹介します。
ドラマに登場した御免与駅にあった運賃表では、御免与駅から高知駅まで18銭、朝倉駅まで28銭、須崎駅まで83銭でした。この運賃を現代の貨幣価値に換算すると、それぞれ約308円、480円、1422円に相当します。実際の運賃は、330円、430円、1240円で、推計値と大きな隔たりはありません。ドラマの設定が、当時の情勢を踏まえたものになっており、番組制作へのこだわりがうかがえます。
1927年 (昭和2年) |
1955年 (昭和30年) |
1995年 (平成7年) |
2024年 (令和6年) |
実際の運賃 | 比較 実際/推計値 |
|
消費者物価指数※ | 1 | 255 | 1514 | 1713 | ー | |
高知まで | 18銭 | 46円 | 273円 | 308円 | 330円 | 107.1% |
朝倉まで | 28銭 | 71円 | 424円 | 480円 | 430円 | 89.6% |
須崎まで | 83銭 | 212円 | 1,257円 | 1,422円 | 1,240円 | 87.2% |
1955年~2024年の運賃は、ドラマの設定値に、消費者物価指数をかけて試算
3.御免与町と高知の位置は?
鉄道運賃について調べるうちに、気づいたことがありました。それは運賃表の駅の並びです。御免与駅周辺の駅は、東から、土佐山田、土佐大津、御免与、一宮、高知になっていました。
実際の駅は、東から、土佐山田、後免、土佐大津、土佐一宮、高知という並びです(間の駅は省略)。御免与駅と、土佐大津駅の位置が逆ではないかというところです!
単純な間違いかとも考えましたが、ドラマを振り返ってみると、幼少期の嵩が歩いて、高知まで母親に会いに行ったシーンがありましたよね。高知県民からすると、後免駅から高知駅まで歩く(約10km 2時間半)のは大人でもしんどいと感じたシーンでした。
ここで想像したのが、あえて位置を入れ替えているのではということです。大津と一宮の間の駅(布師田)から高知駅なら歩けるかもという距離(約5km 1時間強)になります。駅の位置関係が分かる高知県民が、勝手に想像したの話ですが、歩ける距離に設定したということであれば、驚きです!
4. まとめ
今回、あんぱんの値段「10銭」というドラマの設定に注目し、当時の物価などを調査することで、やなせさん、暢さん、当時の人々の暮らしぶりを少し知ることが出来ました。
また、ドラマでは、台詞にも出てきませんが、セットの中(今回は駅の運賃表)には、当時の高知の暮らし等を感じさせてくれる情報が隠れているようです。今後も、セットの中や登場人物の台詞などから、「あんぱん」の世界を想像して楽しめる情報などを見つけて発信していきます。
高知が舞台の連続テレビ小説「あんぱん」は、こうした当時の暮らしをリアルに描いてくれています。「あんぱん」をきっかけに、「やなせたかし・暢夫妻のふるさと高知」に足を運んでみて、お二人を育んだ高知の魅力を探しに来てみませんか?
次回の記事もお楽しみに。ほいたらね!
【参考文献】
総務省統計局「消費者物価指数(CPI)結果」(https://www.stat.go.jp/data/cpi/1.html)
森永卓郎 監修(2008).『物価の文化史事典』. 展望社.